2、『グランド・ブダペスト・ホテル』
ウェス・アンダーソン監督最新作。見た目の可愛らしさは従来の作品を踏襲していますが、なかみはこれまでとはちょっと違います。本作までは家族のはなしばっかり撮ってきた監督が、初めて「国家と個人」というような大きなテーマについて語りはじめた。これは彼のフィルモグラフィ上の転換点となるのかもしれません。
グランド・ブダペスト・ホテルは、中央(もしくは東)ヨーロッパの小国に建つ、古式ゆかしいホテル。現在では「おひとりさま」専用の保養所のような、さびれたホテルになっています。ここで作家は、この国一番の富豪であり、現在のグランド・ブダペスト・ホテルのオーナーである老人ムスタファと出会います。作家は問います「なぜこのホテルを買収しようと思ったのですか?」。老人は答えて曰く、「いいや、買ってないよ」。購入していないホテルが、なぜ老人の所有になっているのか?この問いを導入に、老人の回想が始まります。
ラスト、実はこの老人は、このグランド・ブダペスト・ホテルのロビーボーイであり、伝説のコンシェルジュ・グスタフと数々の冒険を乗り越えてきた仲であることが明かされます。なぜ彼が買っていないホテルが彼の所有になったのか。冒険の末、少年時代のゼロ・ムスタファはグスタフと義兄弟のような間柄となり、グスタフが、ホテルの顧客であった大富豪から相続されたホテルをさらに相続したものであったからです。
ファシズムに対する自由陣営からの抵抗、そしてそれが脆く崩れ去る瞬間、移民や貧民への差別。
しかしながら、そこに一筋の光明が差したこともあったし、「短い間ではあったが、確かに我々にも幸福な時代があった」。フスタファ老人の独白は、希望なのかあるいは絶望なのか。
『グランド・ブダペスト・ホテル』とツヴァイク - 映画評論家町山智浩アメリカ日記
1、『THE GOAL (コミック版)』
1冊目がマンガで情けないですが、仕方ないですね。
田舎のTSUTAYAでもビジネス書ランキングでトップテン入りという売れようです。
マンガは強いですね。
原著(の和訳)は去年すでに読んでいました。
流体力学に根ざした経営理論であるTOC(Theory of Cnstrains)の夜明けを告げた画期的書物ですが、理論書ではありません。小説です。プラトン『ソクラテス対話篇』とか、ガリレオ『天文対話』など、物語の形を借りて自説を紹介するタイプの科学本は、実はヨーロッパの科学界ではありがちなことなのだろうと思います。なにより、読みやすい。
TOCとは何か。『The Goal』によれば、「制約条件を発見し、その制約に他の資源を集中させること」です。そして、その効果は①「スループットは増えたか」②「仕掛在庫は減ったか」③「期間費用は減ったか」によって測定します。
この評価基準は重要です。評価基準が誤っていれば、その誤った基準に則した評価は無意味/無価値だからです。
①「スループットは増えたか」。すなわち、売上からコストを差し引いた純粋な取り分、すなわち「お金」が、その施策によって増えたかどうかは、企業にとって最も重要な指標となります。
②「仕掛在庫は減ったか」。すなわち、将来的なスループットを生み出すために投入したものの、自社内工程に滞留している「お金」が減ったかどうかは、企業の資金繰りに大きな影響を与えます。
③「期間費用は減ったか」。すなわち、将来的なスループットを生み出すために投入している「お金」が減ったかどうか。これはいわずもがな、常識ですね。しかし、優先順位が3番目に来ているところがミソです。TOCにおいて、固定費の削減は、最重要視されてはいません。
それはなぜなのか。企業が目指すべき目標(The Goal)は、「お金を稼ぐこと」だからです。
CSR(企業の社会的責任)が重視され、そうでなくとも、ふつう企業が掲げる理念は、いわるゆる「キレイゴト」が並べられていますが、そもそも、企業の存在理由は「お金を稼ぐこと」にあり、お金を稼ぐことの先でしか大義は果たせません。これはシニシズムでも何でもなく、現実です。稼いだお金をどう使うかは常に道着的な問題を孕んでおり、すべての企業家には倫理が要求されます。しかしながら、前提となるのは「お金」です。
では、どうやってお金を稼ぐのか。TOCは「制約条件にその他の資源を集中させる」と言います。つまり、「一番遅いところに他が合わせる」ということです。「お金がいちばんの目標」とはいえ、その方法論は、非常にヒューマンです。しかしながら、物理学の見地からしても、それが最も「効率が良い」のです。ここでいう「効率」とは、もちろん、先の3つの条件に照らしての「効率」です。
主人公が日本人になっているのに指南役の「ジョナ」と普通に話しているとか、ジョナのビジュアルがユダヤ教のラビのような風貌ではなく、TOC理論の提唱者であるゴールドラット博士の似顔になっていたりと、原作小説をすでに読んでいる身としては引っかかるところですが、マンガとしての完成度を気にする種類の本ではありません。
- 作者: エリヤフ・ゴールドラット/ジェフ・コックス,岸良裕司,蒼田山,青木健生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2014/12/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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108 / 365
できるかなあー、、
365日で合計108の本・映画・演劇に触れることができるのか、というブログです。
365÷108=3.37。3日で1つのペースですね。早くも10日が過ぎようとしています。
3冊、読んでない、、、
3本、観てない、、、
早いうちに取り返せますように、、、