1、『THE GOAL (コミック版)』
1冊目がマンガで情けないですが、仕方ないですね。
田舎のTSUTAYAでもビジネス書ランキングでトップテン入りという売れようです。
マンガは強いですね。
原著(の和訳)は去年すでに読んでいました。
流体力学に根ざした経営理論であるTOC(Theory of Cnstrains)の夜明けを告げた画期的書物ですが、理論書ではありません。小説です。プラトン『ソクラテス対話篇』とか、ガリレオ『天文対話』など、物語の形を借りて自説を紹介するタイプの科学本は、実はヨーロッパの科学界ではありがちなことなのだろうと思います。なにより、読みやすい。
TOCとは何か。『The Goal』によれば、「制約条件を発見し、その制約に他の資源を集中させること」です。そして、その効果は①「スループットは増えたか」②「仕掛在庫は減ったか」③「期間費用は減ったか」によって測定します。
この評価基準は重要です。評価基準が誤っていれば、その誤った基準に則した評価は無意味/無価値だからです。
①「スループットは増えたか」。すなわち、売上からコストを差し引いた純粋な取り分、すなわち「お金」が、その施策によって増えたかどうかは、企業にとって最も重要な指標となります。
②「仕掛在庫は減ったか」。すなわち、将来的なスループットを生み出すために投入したものの、自社内工程に滞留している「お金」が減ったかどうかは、企業の資金繰りに大きな影響を与えます。
③「期間費用は減ったか」。すなわち、将来的なスループットを生み出すために投入している「お金」が減ったかどうか。これはいわずもがな、常識ですね。しかし、優先順位が3番目に来ているところがミソです。TOCにおいて、固定費の削減は、最重要視されてはいません。
それはなぜなのか。企業が目指すべき目標(The Goal)は、「お金を稼ぐこと」だからです。
CSR(企業の社会的責任)が重視され、そうでなくとも、ふつう企業が掲げる理念は、いわるゆる「キレイゴト」が並べられていますが、そもそも、企業の存在理由は「お金を稼ぐこと」にあり、お金を稼ぐことの先でしか大義は果たせません。これはシニシズムでも何でもなく、現実です。稼いだお金をどう使うかは常に道着的な問題を孕んでおり、すべての企業家には倫理が要求されます。しかしながら、前提となるのは「お金」です。
では、どうやってお金を稼ぐのか。TOCは「制約条件にその他の資源を集中させる」と言います。つまり、「一番遅いところに他が合わせる」ということです。「お金がいちばんの目標」とはいえ、その方法論は、非常にヒューマンです。しかしながら、物理学の見地からしても、それが最も「効率が良い」のです。ここでいう「効率」とは、もちろん、先の3つの条件に照らしての「効率」です。
主人公が日本人になっているのに指南役の「ジョナ」と普通に話しているとか、ジョナのビジュアルがユダヤ教のラビのような風貌ではなく、TOC理論の提唱者であるゴールドラット博士の似顔になっていたりと、原作小説をすでに読んでいる身としては引っかかるところですが、マンガとしての完成度を気にする種類の本ではありません。
- 作者: エリヤフ・ゴールドラット/ジェフ・コックス,岸良裕司,蒼田山,青木健生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2014/12/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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