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1年間に読んだ本/見た映画・演劇の合計が108になるといいなあ、という日記。

2、『グランド・ブダペスト・ホテル』

ウェス・アンダーソン監督最新作。見た目の可愛らしさは従来の作品を踏襲していますが、なかみはこれまでとはちょっと違います。本作までは家族のはなしばっかり撮ってきた監督が、初めて「国家と個人」というような大きなテーマについて語りはじめた。これは彼のフィルモグラフィ上の転換点となるのかもしれません。

 

グランド・ブダペスト・ホテルは、中央(もしくは東)ヨーロッパの小国に建つ、古式ゆかしいホテル。現在では「おひとりさま」専用の保養所のような、さびれたホテルになっています。ここで作家は、この国一番の富豪であり、現在のグランド・ブダペスト・ホテルのオーナーである老人ムスタファと出会います。作家は問います「なぜこのホテルを買収しようと思ったのですか?」。老人は答えて曰く、「いいや、買ってないよ」。購入していないホテルが、なぜ老人の所有になっているのか?この問いを導入に、老人の回想が始まります。

 

ラスト、実はこの老人は、このグランド・ブダペスト・ホテルのロビーボーイであり、伝説のコンシェルジュ・グスタフと数々の冒険を乗り越えてきた仲であることが明かされます。なぜ彼が買っていないホテルが彼の所有になったのか。冒険の末、少年時代のゼロ・ムスタファはグスタフと義兄弟のような間柄となり、グスタフが、ホテルの顧客であった大富豪から相続されたホテルをさらに相続したものであったからです。

 

ファシズムに対する自由陣営からの抵抗、そしてそれが脆く崩れ去る瞬間、移民や貧民への差別。

 

しかしながら、そこに一筋の光明が差したこともあったし、「短い間ではあったが、確かに我々にも幸福な時代があった」。フスタファ老人の独白は、希望なのかあるいは絶望なのか。


『グランド・ブダペスト・ホテル』とツヴァイク - 映画評論家町山智浩アメリカ日記

 

 

 

映画『グランド・ブダペスト・ホテル』オフィシャルサイト