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『ミッションインポッシブル ローグネイション』
「ならずもの国家」が何を指しているのかは、映画を見れば明々白々である。
かつてのスパイ映画は「巨悪」を設定し、先進国の諜報員がそれを誅滅するという筋であったが、その構図は、21世紀の現在ではほとんどリアリティを失ってしまったのだろう。
映画としてはアクション・エンターテインメントとして純粋に楽しく、シンドバッドやゾロからジャッキー・チェンへと連なる明朗快活な正統派アクション・スターの座は、トム・クルーズが完全無欠のかたちで受け継いだと言っていいだろう。
お色気の少なさ(ヒロインが背中を見せるシーンはあるが)も、過激な描写がいくらでもある現代にあって、却って新鮮とも見える。また、暴力描写のなかに、決して血が映り込まない。あくまでも見せるべきは役者の動きそのものがもたらす快感なのである。ここではリアリズムがリアリティを意味しない。そういった脚本段階での練り込み、バランス感覚は非常に素晴らしいと思った。
まことにこれは、たとえていうなら「小学生男子」のための映画なのであり、アクション映画というジャンルにおいては、それが100点満点なのである。