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1年間に読んだ本/見た映画・演劇の合計が108になるといいなあ、という日記。

【フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊】

ウェス アンダーソンの最新作というだけで見にいく理由は十分なのだが、
初見ではとにかく情報量が多すぎた。

圧倒的な画面の構成力、
英仏まじりのセリフ、
ちりばめられた名画からの引用、

とくに俳優がフランス語を話すシーンでは、タイプライター風のフランス語字幕がでて、さらに日本語字幕を追っていると、画面にほとんど注意がいかない。この作品ばかりは、日本語吹き替えで観るのがベターなような気がした。

作中で表現される数々の絵画、イラストのレベルがことごとく高い。
とくに獄中で描かれるフレスコの完成度は非常に高く、説得力がある。

(これも見逃しているので詳細がわからないが)おそらく50年代〜60年代の設定のなかで、「この時代のフランスで描かれた抽象画」というところのリアリティが非常に強く意識された絵作りであったと思う。

なぜ料理人ネスカフィエ(エスコフィエ+ネスカフェのダジャレ?)がレオナールフジタなのか、なぜ学生運動の活動家とパリ市長がチェスで戦っているのか、冒頭の自転車に乗った記者のエピソードの存在理由(この映画の本質)、などなど、繰り返し見返さなければ到底掘り下げることのできないものであったと思う。表面をなぞるだけでも傑作と言える出来なのかもしれないが、それ以上の意味をほぐしていくためには、仕事に疲れたレイトショーで観るものとしてはいささか難解だったようにも思う。