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1年間に読んだ本/見た映画・演劇の合計が108になるといいなあ、という日記。

【フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊】

ウェス アンダーソンの最新作というだけで見にいく理由は十分なのだが、
初見ではとにかく情報量が多すぎた。

圧倒的な画面の構成力、
英仏まじりのセリフ、
ちりばめられた名画からの引用、

とくに俳優がフランス語を話すシーンでは、タイプライター風のフランス語字幕がでて、さらに日本語字幕を追っていると、画面にほとんど注意がいかない。この作品ばかりは、日本語吹き替えで観るのがベターなような気がした。

作中で表現される数々の絵画、イラストのレベルがことごとく高い。
とくに獄中で描かれるフレスコの完成度は非常に高く、説得力がある。

(これも見逃しているので詳細がわからないが)おそらく50年代〜60年代の設定のなかで、「この時代のフランスで描かれた抽象画」というところのリアリティが非常に強く意識された絵作りであったと思う。

なぜ料理人ネスカフィエ(エスコフィエ+ネスカフェのダジャレ?)がレオナールフジタなのか、なぜ学生運動の活動家とパリ市長がチェスで戦っているのか、冒頭の自転車に乗った記者のエピソードの存在理由(この映画の本質)、などなど、繰り返し見返さなければ到底掘り下げることのできないものであったと思う。表面をなぞるだけでも傑作と言える出来なのかもしれないが、それ以上の意味をほぐしていくためには、仕事に疲れたレイトショーで観るものとしてはいささか難解だったようにも思う。

ベイビー ドライバー

素晴らしいカーアクション。

歌詞の内容とストーリーがリンクしているはずなのだが、完全に理解できなかったのが悲しい(歌詞の字幕がない!)

最後に明かされる主人公の名前は、マイケル・フランクスの小唄からなのか?
こちらもあんまり理解が及ばなかったのが悲しい。

真夏の夜のジャズ

アメリカ・ジャズ界最大の音楽フェスティバル「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」を捉えたドキュメンタリー。1958年に開催された第5回の同フェスティバルを記録した。「ジャズの父」とも呼ばれる20世紀を代表するジャズミュージシャンのルイ・アームストロングや、ジャズ界有数の作曲家として多くのミュージシャンに影響を与えたセロニアス・モンクザ・ビートルズローリングストーンズ、ビーチ・ボーイズなど多くのミュージシャンにカバーされ、「ロックの創造者」と呼ばれたチャック・ベリーなど、伝説のミュージシャンたちが続々と登場。また、ミュージシャンのほかにもフェスを楽しむ観客たちの姿が多く映し出され、当時のファッションなども見どころになる。監督は、後にオードリー・ヘプバーンエリザベス・テイラー、マドンナといった錚々たる女性たちを被写体にした大御所カメラマンとなるバート・スターン。大胆な撮影手法や美しい映像が反響を呼び、幾度もリバイバル公開されている。日本では1960年に初公開。2020年には、日本公開60年を記念して4Kのあざやかな映像でリバイバル

1959年製作/82分/G/アメリ
原題:Jazz on a Summer's Day
配給:KADOKAWA
日本初公開:1960年8月19日

演者に比べて、観客に黒人が少ない。

黒人キャストばかりの Do the right thing をみたあとだからそう思うだけなのかもしれないが、ジャズやゴスペルが基本的にはブラックミュージックなのを考えれば、今の目線でいうとちょっと異常だ。

1958年の、避暑地の、タバコ長者の個人的な趣味であることを思えば納得できなくもないのだが。

チェリストが汗みずくになりながらバッハをさらうシーンが非常に印象的。マイルスデイヴィスが So What をリリースしてモードジャズを世に問うたのが1959。その前年ということで、ハードバップ絶頂期であり、ゴスペルが教会音楽からポップミュージックになりはじめたころであり、ローザパークスのバスボイコットから3年でもある。

ルイ・アームストロングと、マヘリア・ジャクソンの圧倒的なパフォーマンスが記録されていることで、この映画は永遠のものになった。

DO THE RIGHT THING


その夏一番の暑さを記録したブルックリン、住民たちの潜在的な怒りが遂に爆発する!鬼才スパイク・リー衝撃の問題作!!

【キャスト】
ダニー・アイエロ/オジー・デイヴィス/ルビー・ディー/リチャード・エドソン

【スタッフ】
監督:スパイク・リー

制作年:1989年

スパイク・リー監督の名を世界に知らしめた社会派ドラマ。ブルックリンの黒人街を舞台に、イタリア人が経営するピザ屋で働く黒人・ムーキーのドラマを軸に、アメリカ社会が内包する人種問題を浮き彫りにする。“ユニバーサル・シネマ・コレクション”。


イタリア系のピッツェリア、韓国系の雑貨屋、プエルトリコ系のかき氷屋、アイルランド系の新住民、、、

人種のるつぼブルックリンで描かれる数日の景色のなかに、現代アメリカにも通じる問題が克明に刻み込まれている。

Let's do the right thing.

とはいうけれど、じゃあ、何がRIGHTなんだ?
エンドロールでも引用されるキング牧師マルコムXの意見も、重なりながらも相反する。
非暴力不服従による抵抗と、「最後の理性」として肯定される暴力。

BLMの現在だからこそみられるべき作品だし、今の日本にだって、潜在的な内戦があることを思えば、まったく他人事ではない。

ピッツァ食べたくなった。

『パラサイトー半地下の家族』

殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」「スノーピアサー」の監督ポン・ジュノと主演ソン・ガンホが4度目のタッグを組み、2019年・第72回カンヌ国際映画祭韓国映画初となるパルムドールを受賞した作品。第92回アカデミー賞でも外国語映画として史上初となる作品賞を受賞したほか、監督賞、脚本、国際長編映画賞(旧外国語映画賞)の4部門に輝くなど世界的に注目を集めた。キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。そんなある日、長男ギウがIT企業のCEOであるパク氏の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。そして妹ギジョンも、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく……。共演に「最後まで行く」のイ・ソンギュン、「後宮の秘密」のチョ・ヨジョン、「新感染 ファイナル・エクスプレス」のチェ・ウシク。

2019年製作/132分/PG12/韓国
原題:Parasite
配給:ビターズ・エンド

半地下の家族たちが、貧困から抜け出そうとするがゆえの小さな嘘の積み重ねから、どんどん猟奇的になっていってしまう様がホラー。

そして、地下には更なる秘密が。

地上/半地下/地下の構造の差、高さによる演出、
まったく悪意がないのに、それゆえ他者を決定的に傷つけ損なっている地上の人々、地下からの強烈なバックラッシュ

非常にウェルメイドな映画であるが、「アカデミー賞作品賞を非英語映画で初めて受賞!」と言われると、うーん、そこまで?と思ってしまう。

話題になった韓牛入りのチャッパグッリよりも、半地下の家族が、ちょっとお金ができたところでみんなで食べているサムギョプサルとか、運転士食堂のブッフェのほうが強烈に美味しそうでした。

長女役のパク・ソダムが剛力彩芽にしか見えない。そして最高。

『憂鬱と官能を教えた学校ー【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 調律、調性および旋律・和声 』

近代文化史ーとくにアメリカーを通して見る、ポピュラー音楽文化の生成と発展を縦軸に、音韻論(バークリーメソッド)を横軸に、われわれが心地よさを感じている音楽とはどのような構造によって成り立っているのかを優しく語っていく。

鍵盤必須。

ブラスバンドをやっていた学生のころに読んでおきたかった。

國分功一郎『中動態の世界ー意志と責任の考古学』

久々に興奮した読書となった。

2017年の話題の本で、友達に勧められたりしていたのだけれど、忙しさにかまけてまったく読むことができていなかった。

内容としては、前著『暇と退屈の倫理学』を引き継ぐ形になっている。

自分が学部時代から院生時代にかけて取り組んでいた「近代的自我の非在」という問題と大きく重なる内容で、自分が感じていた疑問が同時代的なものであったことを確信したと同時に、当時この本が刊行されていたらどれだけ助かったか、反対に、どれだけ影響され振り回され不勉強に恥いらなければならなかったかと思うとちょっと恐ろしい。

次著『責任の生成ー中動態と当事者研究』も楽しみ。